急務(96)、五賢帝時代始まる(ネルウァ帝の即位)
『寝るトラ、歯あまる』(五賢帝の順番)
寝る = ネルウァ
トラ = トラヤヌス
歯 = ハドリアヌス
あ = アントニヌス=ピウス
まる = マルクス=アウレリウス=アントニヌス
五賢帝時代とは、5人の優れたローマ皇帝であるネルウァ、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス=ピウス、マルクス=アウレリウス=アントニヌスが治めていた約100年間の時代のことをいいます。
この記事では、五賢帝時代について整理し、高校世界史で問われやすいポイントをわかりやすく解説します。
ネルウァ ― 五賢帝時代の土台を築く

ネロ帝の死後の政治的混乱を収めるため、元老院が皇帝に選んだのが、ネルウァ(またはネルヴァ)です。

養子皇帝制の確立
ネルウァは、血縁ではなく能力を持つ人物を、皇帝の養子として迎え入れる養子皇帝制を確立させました。
当時、70歳近いネルウァは、元老院や軍隊から支持の高い将軍トラヤヌスを養子にして後継者としたのです。
その後、即位15ヶ月で病没しました。
ネルウァの治世は短いですが、五賢帝の黄金時代をもたらす流れを作りました。
トラヤヌス ― ローマ帝国の最大領土

トラヤヌス(2人目の五賢帝)は、ヒスパニア出身の
ダキアとメソポタミアの征服

ダキアやメソポタミアを征服し、ローマ帝国の最大版図を実現しました。

ハドリアヌス ― 辺境防備

ハドリアヌス(3人目の五賢帝)は、前の皇帝のトラヤヌスの領土拡張政策から、領土を維持する国境防衛政策に変更しました。
さらに官僚制の整備や属州の視察などを行いました。
ハドリアヌスの長城

ハドリアヌスは、ブリタニアに「ハドリアヌスの長城」を築くなどの辺境防備に力を入れました。
ハドリアヌスの長城は、北方のケルト人の侵入を防ぐために築かれました。
アントニヌス=ピウス ― 内政を重視

アントニヌス=ピウス(4人目の五賢帝)は、内政の安定化に努めました。
貧民の救済や属州の負担軽減などの社会政策を行いました。
マルクス=アウレリウス=アントニヌス ― 哲人皇帝

マルクス=アウレリウス=アントニヌス(5人目の五賢帝)は、ストア派の哲学者でもあり、
自省録
ギリシア語で著した自省録が有名です。
大秦王安敦
中国の歴史書『後漢書』西域伝には、大秦王安敦の使者が日南郡に入貢したことが記述されています。
大秦王安敦とは、マルクス=アウレリウス=アントニヌスと考えられています。
自らの子に帝位を継がせる
これまでの五賢帝は、帝位は養子に相続させていました。
しかし、マルクス=アウレリウス=アントニヌスは自分の息子に帝位を継がせました。
しかし、皇帝の器ではなく、ローマは混迷の時代を迎えます。

理解を深めるQ&A
よくある質問を通して、学びをさらに深めよう!
この時代に興味を持つために ― 漫画『テルマエ・ロマエ』
『テルマエ・ロマエ』は、五賢帝の一人ハドリアヌス帝の時代を舞台にした漫画で、古代ローマの浴場文化を描いた作品です。浴場設計士ルシウスが現代日本にタイムスリップし、日本の風呂文化からインスピレーションを得てローマに持ち帰る物語が展開されます。ハドリアヌス帝の歴史と文化を楽しく学べる一冊です。
この時代に興味を持つために ― 漫画『まんが!100分de名著 自省録』
『まんが!100分de名著 マルクス・アウレリウス 自省録』は、ローマの皇帝であり哲学者でもあったマルクス・アウレリウスの名著「自省録」をわかりやすく漫画形式で解説した一冊です。この本では、人生の苦難や人間関係、自己成長についての哲学的な洞察を、現代にも通じる形で紹介しており、世界史と哲学の勉強になります。
