踏むよ(前264)カルタゴを、第1回ポエニ戦争
当時、地中海最大の穀物生産地であったシチリア島の支配をめぐり、フェニキア人植民市カルタゴとローマが衝突しました。
これが第1回ポエニ戦争です。
ローマはカルタゴに勝利し、初の属州となるシチリア島を手に入れました。
この記事では、第1回ポエニ戦争について整理し、高校世界史で問われやすいポイントをわかりやすく解説します。
ローマ、イタリア半島を統一
前272年、ローマは南イタリアのギリシア人植民市タレントゥムを征服し、ついにイタリア半島を統一しました。
その後、ローマは地中海へと進出し、西地中海の覇権をめぐってカルタゴと対立するようになります。
カルタゴ ― フェニキア人植民市
カルタゴは、北アフリカ沿岸(現在のチュニジア付近)に築かれたフェニキア人植民市です。
紀元前9世紀ごろ、フェニキア人の都市国家ティルスの人々によって建設されました。
フェニキア人とは?
フェニキア人は、現在のレバノン周辺(ティルスなど)に住んでいたセム系の民族です。
彼らは優れた航海術を持ち、地中海各地に植民市を築きました。
その中でも最も繁栄したのが、ティルスのレバノン人が建設した植民市カルタゴでした。
西地中海の交易拠点へ
やがて母市のティルスがアッシリアに征服されると、カルタゴは自立し、西地中海の交易の中心地として急速に発展しました。
カルタゴは海軍力を背景に、勢力を拡大していきます。
シチリア島の内紛 ― 開戦の火種
シチリア島は、穀物の大生産地でローマやカルタゴにとって非常に重要な島でした。
シチリア島で起きた内紛をきっかけにカルタゴ、ローマの両方が介入しました。
第1回ポエニ戦争 ― シチリア島の攻防
シチリア島の内紛が戦争の引き金となり、前264年、第1回ポエニ戦争が勃発します。
新兵器「コルウス」の発明

海軍力に勝るカルタゴに対し、ローマは陸軍中心の国家でした。
ローマはカルタゴに対抗するため、新兵器「コルウス(コルバス、跳ね橋)」と呼ばれる装置を船に取り付けました。
コルウスの先端には鉄の爪があり、敵船に落とすと固定されます。
そして、ローマ兵はその橋を渡し、敵船に乗り込み白兵戦を仕掛けることで海戦を陸戦に変えたのです。
この戦法によって、ローマはカルタゴに勝利しました。
シチリア島の獲得 ― ローマ初の属州
前241年、ローマはカルタゴを破り、講和条約を結びます。
これにより、シチリア島はローマ初の属州となりました。
以後、シチリア島はローマの穀物供給地(穀倉地帯)として重要な役割を果たします。
復讐を誓うカルタゴ

敗れたカルタゴは、将軍ハミルカル・バルカの指導で再起を図ります。
彼はイベリア半島にカルタゴ=ノウァ(新カルタゴ)を建設し、軍事力を強化しました。
その息子こそが、後にローマへ復讐の炎を燃やす英雄――ハンニバルです。
こうして、カルタゴの復讐戦(第2回ポエニ戦争)が始まることになります。

理解を深めるQ&A
よくある質問を通して、学びをさらに深めよう!
この時代に興味を持つために ― 漫画『アド・アストラ』
『アド・アストラ ―スキピオとハンニバル―』は、第2次ポエニ戦争を中心に描いた歴史漫画ですが、1巻の序盤で第1次ポエニ戦争についても触れられています。ローマとカルタゴの最初の対立がどのように始まり、なぜ両国が宿敵となったのかが描かれ、背景を深く理解する助けになります。特にカルタゴの屈辱とローマの野心が、その後のハンニバルとスキピオの宿命的な対立へと繋がる様子がリアルに描写され、戦争の流れを俯瞰的に学べる内容です。
