前561年 ペイシストラトスの僭主政治

アテネのペイシストラトスは、平民の支持を受け、クーデタを起こして政権を奪い、僭主せんしゅ政治を行いました。

僭主とは何か？「暴君」とは限らない！

僭主とは、非合法に政権を握った支配者のことをいいます。

英語ではtyrant（タイラント）、日本語では「暴君ぼうくん」と訳されることもありますが、古代ギリシアにおいては必ずしも悪政を敷いた支配者ばかりではありませんでした。

実際、アテネの僭主ペイシストラトスは、平民の支持を得て、ある意味「人気のある独裁者」でもありました。

ペイシストラトスの登場 ― 貴族と平民の対立の中で

紀元前6世紀のアテネでは、貴族が土地や政治権力を独占し、多くの平民が貧困に苦しんでいました。

そんな中、ソロンの改革が一定の成果を得たものの、貧富の差の解消には限界があり、依然として不満はくすぶっていました。

こうした不満が高まる中、山地の貧農層（山地党）を中心とする民衆の支持を受けて登場したのが、ペイシストラトスです。

僭主ペイシストラトスが実権を掌握！

ペイシストラトスは、貴族による政治を批判し、貧困層の味方として人気を集め、ついに前561年、僭主として権力を握りました。

ペイシストラトスは、一時追放されるなど政権は不安定でしたが、最終的には政権に復帰し、アテネを支配しました。

重要なのは、彼が武力での恐怖政治ではなく、人気と経済政策を駆使して政権を維持した点です。

その支配は、平民層に恩恵を与えながらも、貴族の勢力を抑えるというバランスを保っていたのです。

亡命貴族の土地を再配分

ペイシストラトスは、政権に反対する貴族を追放し、彼らの土地を没収して貧しい平民に分配しました。

これは、平民の支持を得ると同時に、貴族の力を削ぐ策でもありました。

ラウレイオン銀山と国家財政の強化

ペイシストラトスは、アテネ南部のラウレイオン銀山を開発し、鉱山収入を活用してアテネの街を再開発しました。

ラウレイオン銀山は、のちのサラミスの海戦の時にも役に立ちます。

息子ヒッピアスの時代へ ― 僭主政治の終焉

ペイシストラトスの死後、息子のヒッピアスが政権を継ぎますが、暴君化したことで民衆の反発を受けます。

やがて、僭主政は打倒され、クレイステネスが民主政改革を進めることになります。