凌雲集は、嵯峨天皇の命により編纂された日本初の勅撰漢詩集です。
勅撰とは、天皇の命令で編纂された書物のことを指します。
目次
文章経国思想
平安時代に漢詩集が作られた背景には、文章経国思想が深く関わっています。
文章経国思想とは、文章、特に漢文学の力によって国が栄えるという思想です。
これは、中国から伝来した思想で、「優れた文章を書くことができる人こそが、国家を正しく統治できる」という考えに基づいています。
魏の文帝・曹丕の言葉が由来と言われています。
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この思想が日本に伝わると、平安時代の貴族社会では漢詩や漢文を作る能力が、政治家としての資質を示す重要な指標となりました。
嵯峨天皇の治世
嵯峨天皇の時代には、この文章経国思想が花開きました。
嵯峨天皇自身も優れた書道家(三筆)として知られており、漢文学を重視する姿勢を示していました。
覚え方
『くさった、三筆』(三筆)
く = 空海
さ = 嵯峨天皇
た = 橘逸勢
このような背景があったからこそ、凌雲集のような勅撰漢詩集が編纂されることになったのです。
勅撰漢詩集
平安時代には、凌雲集、文華秀麗集、経国集の3つの勅撰漢詩集が編纂されました。
凌雲集と文華秀麗集は嵯峨天皇の命で、経国集は淳和天皇の命でつくられました。
覚え方
『良文、稽古、超苦戦』(勅撰漢詩集を古い順に覚える)
良 = 凌雲集 (814年)
文 = 文華秀麗集(818年)
稽古 = 経国集 (827年)
凌雲集 ― 日本初の勅撰漢詩集
凌雲集は、嵯峨天皇の命によって、814年に編纂された日本初の勅撰漢詩集です。
ちなみに日本初の勅撰和歌集は、905年に成立した古今和歌集です。
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文華秀麗集
文華秀麗集は、嵯峨天皇の命によって、818年に編纂された勅撰漢詩集です。
凌雲集の続編的な内容です。
経国集
経国集は、淳和天皇の命によって、827年に編纂された勅撰漢詩集です。
3つの勅撰漢詩集の完結編です。
淳和天皇は、平城天皇と嵯峨天皇の異母弟です。
私撰漢詩集
私撰漢詩集は、民間で作られた漢詩集のことです。
懐風藻 ― 日本最古の漢詩集
懐風藻は、現存する日本最古の漢詩集です。
編者は不明で、751~752年ごろに完成したと見られています。
大津皇子や淡海三船などの作品が掲載されています。
性霊集 ― 空海の漢詩集
性霊集は、空海の漢詩を弟子の真済が編纂したものです。
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